2016年11月10日木曜日

高松丸亀町商店街振興組合 理事長 古川康造氏

お二人目の講師は高松丸亀町商店街振興組合 理事長 古川康造様。
テーマは「しろうとのまちづくり」です。

議員、行政職員を中心に、13000人もが視察に訪れた丸亀町商店街。その再開発事業をご説明いただきました。

【まちづくり=土地問題の解決】
個人の土地は、どう使おうと地権者の自由。商店街では、シャッター店がいちばん問題だが、地権者の自由なので、どうしようもなかった。
日本経済の根本的な建て直しには土地問題の解決しかない、という学説もある。
困難とされてきた地域の土地問題を、民間と民間の契約でクリアした。地権者の共同出資会社をつくり、地権者は地代を受け取っている。
まず、廃業支援を行って、全地権者の従前債務を精算して無借金で廃業。
土地をまちぐるみで、60年一括で借り上げ。(60年の定期借地権)。
広場、市場、診療所などでまちごと再開発。その利益を地権者でシェアする仕組み。役所主導ではなく、民間で。前例にこだわらないやりかた。
「土地の所有権と利用権を分離した」。これは過去にない方法。

【実際のまちづくり】
全国の、失敗した再開発例を徹底的に調査し、失敗例をとりのぞいた。
A〜G街区にそれぞれ明確な役割がある。
A街区 セレクトショップゾーン。高級店と大きな広場。
B街区 飲食店。フードコート36店。
C街区 美と健康。病院、血液センター、フィットネス。
G街区 大型マンション、ホテル誘致。
残り3区 検討中。

商業地の再開発という視点より、むしろいかに「居住者」をとりもどすか、という視点。
1500人の生活者に、商店街の上に住んでもらう。
都心への高齢者の回帰現象。実際にマンションは全て完売している。

商店街の再開発ではこれまで、業種の再編成作業が、たいへんであった。いかなる業種を引っ張るにしても、反対者がある。そこで、土地の所有権と利用権を分離して、利益をシェアする仕組みを作った。
業種の再編成の基準を「生活者」の視点に置いた。高齢者のパラダイスのまちづくり。ここなら住みたいよね、というまちづくり。
全て歩いて、安心安全な都市生活。これが整えば、まちがいなく居住者は帰ってくる。需要があれば、商店街は、勝手に再生していく。

【居住者を取り戻す】
商店街は「公共性」に目覚めない限り存在意義を失う。様々な分野の人が活躍するステージでなければならない。
居住者をとりもどす時、どうしても避けて通れなかったのが医療。
診療所には入院施設はない代わりに、機器は最新のものを揃えた。ドクターには、往診回診をお願いした。上のマンションが「病室」代わり。居住者は、最新医療を受けながら、自宅で最期まで療養できるので、たいへん喜んでいる。

実はこの診療所のドクターは、この地の出身者。この商店街は、地域から流出してしまった優秀な人材を取り返すステージになった。

【パブリックスペースの整備】
商店街に行きたくない理由は「トイレがない」「休憩場所がない」。
全く利益の出ないパブリックスペースの整備は、民間のエリアマネジメントの中でできた。広場は、民間の土地を入れた大きなものなので、道路の使用制限を受けずにいろいろなことができる。

【イベントでの町おこし】
商店街主催のイベントでの町おこしは限界。イベントでは、多くのお客様を呼び込めても商店街の「売り上げ」が伸びない。理由はただ一つ。消費者のみなさんがほしいと思っている商品が並んでいないから。現在、イベントは、市民のみなさんの「持ち込みイベント」のみ。まちは、広場というステージを用意した。

【まちづくりに年月を要した理由】
計画は平成2年着手。A街区竣工平成18年。時間がかかったのは、地権者の理解が得られなかったわけではない。地権者はわずか4年で全員同意。この16年間は、法律との戦い。たとえば、市の道路の上のブリッジ(ビルの回遊のため)は絶対に許可が下りなかった。国の特区申請を行ってようやく具現化。これだけで3年かかった。他にもありとあらゆる法律が、計画を阻んできた、そのため、16年を費やした。

【税収の増大】
補助金、制度融資、使えるものは全て使った。市役所の都市計画では、国交省のメニューは使えない。ここは民間でやったので、全ての省庁のメニューを横断してありとあらゆるものを使った。
公共インフラ投資が全て終わっている、まちの中心部。建て替えたことで開発前より900%の税収が発生している。固定資産税だけで1億2000万の増収。年間約10億の税収アップ。土地の有効活用が最も合理的な税収アップにつながる。

【60年先にどうなるか】
60年先、全ての建物を壊し、更地になって、白紙で返ってくる。そのときはまた、まちの新しい絵を描ける。
100年で定期借地権を設定しようとしたが、100年先に運営会社がちゃんとあるかどうかわからないので60年にした。(特約条項として、30年延長できる契約を盛り込んだ。)

自分たちがいかにハッピーな老後を暮らすか。これがこの計画づくりの根底。豊かな老後を担保するまち。自分たちが暮らしたいまちをつくった。




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